生きるという上では、その若者は不器用このうえないのである。人見知りであり、人の顔色をうかがいながらコミュニケーションをとっていたので会話がはずむこともなく、毎回尻切れトンボのような会話。心を開こうと思っても、すぐに貝のようになってしまい、生理的な合わない人とは、顔を合わせることもしないし、その人と２人きりになろうものなら、いたたまれない気持ちにすぐになってしまうことも多々あったのである。それでも自分のことが好きだから、いい風に装うこともしばしばだった。
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忘れかけていたスプーン一杯の事
人間 要領のいい奴より悪い奴の方がいい
要領のいい人間 それは己を隠している
己を隠すために第三者のまえではいつわりを言うかわいそうな人間
そして そいつ何事も それなりにすましてしまう悪い癖のあるかわいそうな人間
己の人生 要領悪く生きたほうがいい
他人から何と言われようと
そいつは 一生懸命に己の人生を生きているんだから
一生懸命生きている姿 それは本当に美しいもの
でも奴らからすれば
何を粋がっているんだい
人生は要領のいい人間だけが
この厳しい世の中勝てるのさ
力のない人間はおちこぼれたらいい
と 言うかもしれない
そんな言葉 信じたくない
いや 信じない
要領の悪い方がいい
そいつは 相手の立場に立って 物事を考えてくれる
なぜって それは自分が要領悪いからさ
忘れかけていた スプーン一杯のこと
1983年3月18日
